「安心して働く喜びと環境」


 見学させて頂いた、”オール5”のバリアフリー施設のT社さんでは、様々な障がいをもた
れた方々がそれぞれの特技を活かして、チームワーク良く楽しそうに生き生きと働いてい
た。
2008年にスタートした当初は知的障害者と身体障害者のみだったが、今は380数名のうち
、精神障害者が半数以上を占めていて、近年増加の一方だということであった。
現代人が抱え込みがちな特有の孤独感。他人には見えない心の病。増加の一方をたどる精
神障害者。今や世界中で、3億人を超えるうつ病。日本においては400万人を超える精神疾
患患者と世界一多い精神病床数。近年における増加率は非常に高く、特に若者における増
加率はさらに高い。
注目する現実問題があった。 精神障害者の方は、1日8時間、週5日間の連続勤務が難
しい方も多く、正社員として条件を満たして働くことができなくなる。それが、自立の妨
げとなる。という事である。
この異常なまでの精神障害者の増加率に対して、緊急な対策が必要であると、社会的コ
ンセンサスがとられている今、私たちにできる事は何なのであろう。
近年、心理学や精神医学の進歩により、自己分析や脳の作用などが、より明らかになっ
た。
それによって、対策や療法が進歩し、健常な状態に戻してくれる可能性も増えてきた。
しかしながら、精神疾患患者数が増加の一方をたどるのは、心理学や医療はその後の患者
の人生、その先の幸せに生きていく方法や導きについては、治療終了後はほとんど関わる
ことがなく、また同じような状況に後戻りしてしまうことが絶えないからだ。
様々な環境や対人関係、思考の癖などからのトラブルや精神的なストレスにより、脳の
機能など障害を受けてしまった方々が、治療や人的支援によって回復した後、価値観や生
き方そのものを変えなければ、また同じく逆戻りだ。と言うのである。
いまだに根強く残る、精神病=異常者という精神障害者への差別。身も心も耐え難い経
験と苦行を重ね。社会や周囲と断絶されてしまった孤独。
そこから、なんとか乗り越えたとする。が、日々元気に生きていける方法は、誰が導いて
くれるのだろう。回復後に間もない不安定な状態で独りで探し求めても、立ち戻った同じ
環境で、果たして救いの手は見つけられるのだろうか。
私たち仏教者は、釈尊の教えに導いて頂き、その心を引き継ぎ、自他共に人間の精神
や心について実践を通じて、研究し探求してきた。 苦しみを取り除き、精神の安定を与え
てくれる仏教的な智慧と生活に帰依している。 悩みを抱える者が望むことは、「今以上に
ストレスを増大させずに、過去の執着や未来の不安にとらわれず、孤独と虚無感から解放
してくれる真の意味での救い」で、「いつも安心で自由で新鮮な心で居たい」のだ。万人
が望むところでもある。
社会の仕組みが急速に変化し続けるこの困難極まりない現代において、どう生き抜くか

歴史や仏教という裏打ちがある、普遍的な先人たちの英知に、すがりたい。という切実な
人々の思いに、各分野の様々な特性を活かし一団となって、一刻も早く具体的に答え、寄
り添える場を広めていくべきではないだろうか。

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